日々これ成長、新米主婦看護師の日常

白衣を着た女性

プリセプター

新人看護師の教育制度として、プリセプターシップというものがあります。
学校を卒業して国家試験に受かっただけでは、いざ実際の現場に出ても全く役に立つことのできない私たち新人看護師を一人前に育てるために、3~5年目くらいの先輩看護師がマンツーマンで指導に当たるという制度です。

もちろん、新人の教育はチーム全体で行ってくれるものですが、看護師業務を一貫して習得できたり、精神面での悩みまで相談しやすかったりなど、私たち新人看護師にとって、頼もしい制度だと感じています。

私を担当してくれるプリセプターは信頼し尊敬できる素敵な方で、看護師になって3年目で、もちろん私よりずっと年下です。
私のようなベテラン看護師のような年齢の新人に対するのは、きっと気を使うだろうと申し訳ない気もしたのですが、半年たった今では、公私ともに話しやすく信頼できる間柄になってきました。

ミスや未熟な点の多い私のような新人が何とか頑張れているのも、プリセプターに恵まれたおかげなのかもしれません。
彼女は職場の中でも温厚でおっとりしたタイプです。
いつも穏やかな口調で患者さんからも人気が高く、誰からも好かれるような人です。

責任

そんな彼女ですが、一度だけ本気で私を叱ってくれたことがありました。
それは、働き始めて2カ月を過ぎた、新人としての緊張感が抜け始めた頃の事です。

その時、彼女の担当する患者さんが、手術のために絶食をしていました。
病院の決まりでは、絶食のために患者さんが飲食できない時間は原則として付き添いの人の飲食物もナースセンターで預かるということになっていたのです。
小児科病棟と言う事もあり、患者さん本人の意思だけでの絶食が難しいための、大切な規則です。
ところが私は、その規則違反を黙認してしまったことがあります。

私が手術前の検温のために一人で患者さんの元を訪れた際に、たまたま付き添いのお母さんがペットボトルのお茶を飲んでいるのを見てしまいました。
一応預かる規則である事は伝えたのですが、飲みきってすぐに捨てるからと言われて預からなかったのです。

私がベッドから離れて程なくして、ナースコールがなりました。
駆けつけてみると、目を離したすきに、お母さんの飲みかけのお茶をお子さんが自分で飲んでしまったというのです。
結果、その患者さんの手術は延期にせざるを得ませんでした。
当然、担当看護師であった彼女の責任も問われ、多大な迷惑をかける事になりました。

2人きりになった時に、謝る私に彼女は、強い口調で言いました。
「悪いのは私も同じです。あなたが謝るべきなのは私ではなくて患者さんですよ」
今回の事で、一番被害をこうむったのは患者さんだと言われたのです。
もちろんルールを守らなかったという非はありますが、事前にもっときちんと理解してもらうように説明を出来なかった事が、看護師として不十分だったのです。

お母さんのペットボトルを見た時に、もう一度なぜ預からなくてはならないのか説明をしていたら、今回の事は防げたかもしれません。
これも経験であり勉強になったと思っていますが、些細な事が大きな結果をもたらす事もあるので、気を引き締めて頑張りたいと思います。